2014年9月17日水曜日

イナワヤンのゴミ山・コンポスト事業

本日はフィリピンのセブ島でコンポストの事業(BIO NUTRIENT WASTE MANAGEMENT Inc.)を行っているクリスさんとエマさんにインタビューを行いました。クリスさんとエマさんにつなげていただいた櫻井絹恵さんも同行してくれました。



クリスさんらの事務所から車で移動し、市内を抜けて実際にコンポスト化が行われている場所へ向かいました。コンポスト化されている施設に近づくにつれて、舗装されていた道がだんだんとぬかるんだ道になっていきました。このような道になってくると周りの景色も変わっていき、発展目覚ましい建物群がいつの間にか、トタン屋根の並ぶ、見るからに貧しそうな家々になっていきます。さらに施設に近づいていくと、プラスティックゴミや段ボールなどの紙ごみを回収、処理している建物が並ぶようになりました。



家はと言いますと、もう人が住んでいるにかいないのかよく分からないボロボロの家に豚や牛などの家畜と一緒に人が住んでいました。ここまで来ると車の中にいても臭いが分かるくらい生ごみの臭いがしだし、道もぬかるみ、ハエも増えてきました。(クリスさんの四輪駆動の車でなければ進めないぐらい大変な道のりでした)






現場につくと、普段使う三次元マスクのようなものではない明らかに作業用であるマスクを受け取り、口と鼻をしっかりと覆って車を降りました。車を降りると、そこには山のような生ごみ、これまで見たこともないぐらい大量のハエや蚊、そしてそこで働く人たちが目に映ってきました。マスクをしていても、まるでゴミに鼻をくっつけて嗅いでいるような強烈な生ごみの臭いがしました。

まず初めに施設の敷地内にあるコンポストトイレについてエマさんに教えていただきました。ここのトイレはとてもきれいにされていました。男性用と女性用トイレで分かれていましたが、どちらも「し尿分離型」トイレ、つまり、尿と便を分けて回収するトイレであり、尿は薄めて液肥に、便は堆肥に利用します。便は用を足すとそのまま下にたまっていくようになっていました。便を堆肥化する際には水分量の調整が必須なのですが、コンポストに水分が入らないように、用をたすところとおしりを洗うところとで便器を分ける工夫がなされていました。(ちょっと面倒な気もしますが)水洗トイレではないので、水をかけて流す代わりに、堆肥をスコップですくって便の上にまぶします。この便をためコンポスト化するタンクは一つで100L入り、いっぱいになったら別のタンクに取り替えます。尿のほうは1日で一杯になるので毎日取り換えているそうです。下の写真は白のタンクが尿、青のタンクが便をコンポスト化しているタンクです。


ここに働く人は皆ここのトイレを使っているのかと思ったのですが、そうではないようで、女性はこのトイレを使用していますが(といってもここで働いている女性はほとんどいませんでした)、男性はほとんどがその辺でしてしまうそうです。その理由はこのトイレがきれいすぎるからだとエマさんは言っていました。ここでトイレに対する男性と女性の考えの違いがわかります。女性は清潔さや恥ずかしさを優先してトイレを使用するのに対し、男性はその考えが女性よりも強くはないようです。また、どちらのトイレにもこのトイレの使い方が写真のように書かれていました。

次にコンポスト事業についてクリスさんに伺いました。まず、コンポスト事業の仕組みについて聞きました。仕組みは、初めに、マーケット(野菜などを売っている市場のほうの意味です)から市のDPSdepartment of public service)がゴミを回収します。そのゴミはほとんどが有機性廃棄物なのですが、これをクリスさんの事業がコンポストにします。コンポスト化できるマーケットから出たゴミは優先的にこの業者に運ばれるようになっています。この業者が1トンあたり700ペソで市から処理を請け負います。ゴミがトラックで施設内に運ばれるとコンポスト化できないプラスティック類と、コンポスト化できる野菜、果物などの生ごみに分けます。その際、大きい生ごみは破砕機にかけます。分別された生ごみは山積みにされてコンポスト化されていきます。1日に約40トンものゴミを処理し、コンポスト化しているそうです。

ゴミをマーケットから回収している理由は、他の地域や団体などで回収しているゴミには何が含まれているか分からないからだそうです。細菌の中にはコンポスト化に影響があるものもあり、その細菌がいったん紛れ込んでしまうとそのまま増殖し、取り出すことが困難になってしまいます。そのため、ゴミの組成がほとんど一定で危険ものが紛れている可能性が低いマーケットからのゴミのみ回収しています。車での移動中もそのことについて話し合いをされていて、「他の地域からのゴミを回収してしまうとすべてがだめになってしまうから、絶対にマーケット以外のゴミは回収するな」と言っていました。


次にコンポストの製造方法について伺いました。
生ごみの山はまず一番右の貯蔵場(BAY1)に作られます。コンポスト化しやすいように細かくなった生ごみを層になるように山積みにしていき、その上にコンポストの活性化剤(高倉式コンポストを参考にしています)をまぶし、またさらに次のゴミの層を作り、活性化剤をまぶし…という工程で山を作ります。この生ごみの山を置く載積場は全部で10棟(BAY1~10)あり、それらのスペースは隣接して配置されています。一週間かけて山ができたらその山はひとつ左のスペースに移され、空いたスペース(BAY1)にまた新しい山が作られていきます。これらの山は一週間経つと一つ左のスペースに順々に移動していき、十週間が経過するとようやくコンポスト化が完了します。できたコンポストは製品化する前にふるいにかけ、コンポスト化が不十分な大きいものを取り除きます。できたコンポストは体積も重さも最初の20%になります。このコンポストは一袋25kgの袋に詰められ、1キロ10ペソ(25)、つまり、一袋250ペソで販売されます。大きい農家など大量に購入する人にはその量に応じて1キロ5~10ペソで販売しています。



その次に雇用形態について伺いました。
ゴミの分別や細断、コンポスト化のための載積などで雇われている人たちはグループ(1グループ1015人)を組織しています。ここでは全部で3グループ、つまり4045人を雇っているのですが、グループ内のメンバーはグループで選別しています。その理由は、ここでの給与形態にあります。以前は1300ペソで1人ずつ雇っていたそうですが、そのシステムを止め、グループごとで1台のトラックに運ばれてくるゴミを請け負います。業者は1トンで700ペソを受け取るのですが、作業するグループは1トン350ペソで請け負います。つまり、グループでゴミ取集トラックのゴミを引き受け、そのゴミが10トンあった場合、そのゴミの作業が終われば、全員で3500ペソを山分けするという形です。上の表はグループごとにどれだけのゴミを扱ったかを記しています。(トータルの量と合計値が合いませんが…)訪れた日は月曜日で、月曜日の欄を見るとどのくらいゴミを処理しているか分かります。火曜日以降の欄は先週の数字だそうです。



この業者以外で働いている人たち(主にゴミを漁っている人)は一日80ペソ~200ペソの収入しか得られませんが、ここではゴミを処理する量に応じてグループごとで得られる給料が変動します。一番収入の多い人では一週間で約4,200ペソ(10,500)を稼いだそうです。一般的にフィリピンのセブ島では月収10,000ペソ(25,000)なので、この場所の給料はとても良い方です。しかし、グループの働きによって給料は変わるため、労働者は励んで働きます。そのため雇用されている人がグループを作るときはよく働くメンバーしか入れません。排他的ですが、効率がよくなり、雇用者と被雇用者ともによい結果になります。Win-Winの関係になっています。また、ここに働く人は2013年にフィリピンを襲った大型台風ハイエンの被災者だそうで、家や住む場所を失った人々だそうです。

請負の1トン700ペソのうち、350ペソは人件費に使われると書きましたが、残りの350ペソは機械のメンテナンス費や運営費で使われるそうです。自分たちの給料はコンポストの売り上げで決めるとおっしゃっていました。

この事業は二年前の2012年に初期投資500万ペソ(1250万円)で始まり、今年の5月から市からのゴミの請負が始まり、721日に一番初めのコンポストを製造したそうです。現在のところは順調に製造できているそうです。コンポストの売り手は家畜の飼料を生産するために大型農場を経営しているDoleやフィリピンのビール会社のSan Miguelを見込んでいるそうです。(訪問した当日に50袋の契約がありました。本当に始まったばかりだなーと思う光景でした。)この施設の周辺でコンポスト事業をしているところは他にはないとおっしゃっていました。

今後、この事業がどのように発展していくのか、とても気になります。労働者にも環境にも意義のある事業であると思うので、これをもとにもっと広まってほしいと思いました。


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