2015年4月9日木曜日

メタン発酵実験(擬似糞作成、堆積)

実験内容の説明を行う前の想定している屎尿活用システムの流れをもう一度確認しておきます。

〇想定している屎尿活用システム

図1 想定している屎尿活用システム
①トイレの特徴と使用法
・尿と便を分離するタイプの便器を用いており、尿は尿タンク、便は便槽に堆積される。
・大きい方の使用の度には、便に灰を振り掛ける。(条件によってはなにも振り掛けない、灰の代わりに炭、または、戻し堆肥を振りかけることも実験した)
・悪臭を放たない。
・想定するエコサントイレは従来のように建設の際にある程度の土地を必要とするような形ではなく敷地が十分になく、密集地にも適するように、小型化され、移動・設置が容易なタイプが用いられる。

②、③回収、運搬、保管
・1週間おきに便槽の便、尿回収のタンクが回収人によって回収される。
・回収人は回収する便、尿の重さに応じたお金をトイレ使用者に支払う。(貧困層の収入、トイレ使用のインセンティブ)
・回収された尿と便は、加工までの期間、約1~2週間保管される。(念のためのブランク)

④尿の加工、液肥の農地への還元
・回収した尿は薄めて、液肥として農地に還元される。
・加工した液肥は販売され、その中で得られた利益の一部を回収人を通じてトイレ使用者へ還元する。

⑤→⑥または⑧便の加工
・回収した便が堆肥に用いられる場合、病原菌を持たない安全な堆肥として用いるまでに半年間発酵させる。
・回収した便がバイオガス生成のための原料として用いられる場合、ガスプラントの発酵槽に投入される。

⑦堆肥の農地への還元
・生産した堆肥を農地に還元する。
・生産した堆肥は販売され、その中で得られた利益の一部を回収人を通じてトイレ使用者へ還元する。

⑨消化液の農地への還元
・バイオガスプラントの発酵槽で生じる、消化液を加工し農地に還元する。

⑩メタン発酵、メタンガスの利用
・便は1度の投入につきおよそ2週間の期間、メタン発酵され、メタンガスを生じる。
・得られたメタンガスは調理時のガスとして用いられたり、発電の燃料として用いられる。
・ここで得られた利益の一部を回収人を通じてトイレ使用者へ還元する。

〇実験内容の決定までに…
 対象としている地域は、農村部、または都市のスラム街です。農村部では比較的トイレを建設する用地に余裕があるかとは思われるので、そちらでは従来のエコサニテーショントイレでの建設は可能かもしれません。(その場合は便槽も大きくなるので、②、③における1週間おきの回収は必要なく半年間便槽で発酵させることが可能です)

しかし、都市部の河川の水質汚染等を防ぐには、密集し、土地に余裕がないような都市部に適したトイレを検討する必要があります。ですので、①の中のコンパクトなエコサントイレを想定しています。今回実験に用いた、仮のトイレの便槽の大きさも写真1の通り、そこまで大きいものを用いてはいません。

今回の実験では尿は扱っておりません。尿は薄めるだけで、そのほかに特別な処理が必要ないと考えたからです。

一方、便のほうでは、堆肥として用いるのか、メタンガス生成のための原料として用いるのかで、行うべき実験が異なります。いくつかのケーススタディや2014年9月に行ったフィールドワークの結果から、農地に人糞由来の堆肥を用いることに抵抗があることが確認されたので、今回の実験では堆肥ではなく、メタンガスを生産しようという結論に至りました。

屎尿分離型のトイレで、尿は液肥として用い、便はメタンガスの原料として用いるという試みは今のところ、自分たちだけではないかと思います。

したがって今回行った実験は、図1の⑤、⑧、⑩を扱った、エコサントイレから得られる便を用いたメタン発酵実験になります。初めはどのぐらいのメタンガスが出るのか、そもそも、こうした一連の流れを想定した上で、メタンガスがうまく出るのか、というところからわかりませんでした。やってみてのお楽しみでした。


〇実験内容について
<大まかな手順>
    擬似糞つくり
    1週間の擬似糞の堆積とさらに1週間の保管
    2週間のメタン発酵
    発生した気体の分析

①疑似糞つくり
 我々が実験を行うに当たって便の使用が必須ですが、便の出所や実験場所、処理方法等の多くの問題点が浮上したため本物の便を使用することは避け、その代替品として疑似糞を作成することで実験を行いました。

 この疑似糞とは市販のドッグフード120gを水400mlに30分程度浸漬後、そこに市販の堆肥120gを加えよく攪拌したものです。この方法は実際に疑似糞を用いた研究をしている東工大の国際開発工学専攻の中崎先生からご指導いただき、この比率は便の含水率等の情報を基に設定しました。

またこの量は4人家族の1家庭から1日に生じる便のおおまかな量であり、これを1日分として1回の実験につき7袋用意しました。(計7日分、定期的な回収までの日数)

②1週間の擬似糞の堆積とさらに1週間の保管
 今回の実験内容を実際に運用した際を想定すると、メタン発酵を行うためにはある拠点へと便を集積する必要があります。しかしその運搬コスト等を考慮すると、毎日運搬することは非常に困難であると考えられました。従って我々は実際の使用を想定し、とりあえず1週間の間、疑似糞を堆積するという作業を行いました。

 この操作では、1日分の疑似糞をプラスチックの容器(20L)に投入し、さらに条件によっては灰または炭をその疑似糞の表面を覆うように投入するというものを1日の作業とし、これを1つの実験の開始以降は1週間毎日行いました。翌日以降はさらにその上から疑似糞及び灰または炭を投入し、疑似糞と灰または炭が層を成すように投入作業を行いました。またこの操作は東工大すずかけ台キャンパスの図書館裏にある畑の一画で実施しました。

写真1 堆積時の様子
写真2 堆積させた擬似糞が見えなくなるまで灰で薄く覆う
写真3 同様に炭で覆う

次回はメタン発酵、気体の分析、結果の考察を報告します。










0 件のコメント:

コメントを投稿